モテ詩人「バイロン」のスキャンダラスな女性関係と復讐劇
バイロンの異母姉「オーガスタ・リー」
19世紀初頭、イギリスの貴族で詩人として成功した男爵「バイロン」。
女性からの人気が高かったためか、彼にはスキャンダラスなエピソードがたくさんあります。
結婚するものの夫婦関係はうまくいかず、ついには妻からの復讐によって国から出て行くことに。
今回はそんなバイロンの女性関係と復讐劇についてお話します。
社交界でモテまくる、ダンディな貴族詩人
1812年、バイロンが24歳のときでした。
ヨーロッパ大陸の旅行で書きためた詩が『貴公子ハロルドの巡礼』(第1巻と第2巻)という作品として出版され、この作品が当時の大ベストセラーに。
バイロンは一躍、社交界きってのダンディな貴族詩人として人気者になります。
社交界の女性たちはこぞってバイロンとのつきあいを求めてむらがってきたそうです。
バイロンは既婚・未婚を問わず、いろいろな女性たちと付き合いました。
有名なエピソードがあります。
キャロライン・ラムという、すでに夫がいるにもかかわらずバイロンに異常な情熱を燃やした女性がいました。
キャロラインはバイロンに振られてしまったあとも、バイロンに会いたくて仕方がなかったそうです。
バイロンの気を引くため、少年の姿に身をやつしてバイロンの前に現れたり、パーティーではグラスを割って大勢の前で自殺を試みたりしたんだとか。
ここまで非常識な振る舞いをさせてしまうほど、バイロンはモテ男だったんです。
異母姉オーガスタとの危険な関係
バイロンと関係を持った女性たちのなかで、もっともスキャンダラスなエピソードは腹違いの姉、オーガスタ・リーとの恋愛です。
1814年4月、オーガスタは、メドラという女の子を出産します。
この子の父親がバイロンであるということは、現在は知られているところです。
オーガスタには夫がいましたが、当時はバイロンのところに居候をしていました。
バイロンはオーガスタとの関係を大切に思いながらも、このような危険な恋愛関係を続けることが難しいと感じていました。
そこで世間の目をあざむくため、バイロンは以前に結婚の申し込みを断られた令嬢、アナベラ・ミルバンクとの結婚を考えます。
バイロンの結婚はやむを得ない隠れ蓑(みの)だったというわけです。
オーガスタもこの案に快く同意しました。
バイロンはアナベラに再びプロポーズをし、1815年1月に彼女と結婚。
しかし結婚後もバイロンは、オーガスタとの暮らしを続けます。
妻アナベラと2人ではなく、姉オーガスタを加えた3人での暮しを続けたのです。
妻アナベラ・ミルバンク
バイロンとアナベラの性格は、正反対。
アナベラはとても几帳面で真面目なひとでした。
バイロンがアナベラのまじめさにあこがれたのも事実ですが、実際に共同生活を営むのは難しかったようです。
1816年1月、アナベラは生後1か月の娘エイダを連れて実家に戻ってしまいます。
ふたりは1816年2月に、お互いに対して怒り、いらだち、そして非難をし合って、別れました。
以前は恋愛関係にあったキャロライン・ラムはアナベラに、バイロンの同性愛疑惑を暴露するようけしかけました。
そしてほどなくして、ロンドンがバイロンの私生活の話題でもちきりになりました。
バイロンは社交界から追放され、冷たい視線にさらされるようになったのです。
結局バイロンはイングランドにとどまることをあきらめ、オーガスタは自分の後を追ってきてくれると信じて、同年4月25日、再びヨーロッパ大陸へと向かいました。
かの皇帝ナポレオンが使っていた馬車のレプリカを特別に注文し、友人とともに大陸へと逃れれました。
いっぽうアナベラは、バイロンの大切なオーガスタを支配します。
オーガスタにバイロンからの手紙の返事を書かせないばかりか、バイロンがオーガスタに宛てた手紙をチェックしていたのです。
なにも知らないバイロンは、遠くスイスのレマン湖畔で、いらだちを感じながらひと夏を過ごしていました。
オーガスタに自分を追ってくるよう、繰り返しお願いをしましたが、まったくその気配がない。
アナベラのバイロンに対する復讐は、オーガスタに対して彼女の自由を奪うことと、娘エイダに対して父親がひどい男だったと伝えること。
つまりバイロンの大切な二人を自分の意のままにすることだったのです。
バイロンはアナベラに向けて、次のようなことばを贈っています。
「さようなら、元気で。こんなふうに別れ、身内にもの全てから引き裂かれ、胸の中は焼け爛(ただ)れ、ただ独り、枯れ果てても。いや、もっと惨めな我が身ながら、死ぬことすらできない。」
こうしてバイロンと彼をとりまいていた女性たちは、二度と顔を合わせることはなくなりました。
多くの女性と関係を持ちながらも、結局は愛する人と生涯をおくれなかったバイロン。
血のつながった姉を恋人にしてしまったために、このような悲劇が起きてしまったんでしょう。