あだ名は「ワンワン宰相」。吉田茂の犬好きエピソード
ケアンテリア
吉田茂は大物政治家であるいっぽう、熱心な愛犬家でもありました。
彼の犬好きは有名で、総理大臣に就任した際に「ワンワン宰相」とあだ名がつけられたほどです。
公務中にも犬を入手。多くの愛犬との暮らしぶり
吉田はたくさんの犬を飼っており、多いときには10匹以上の愛犬と暮らしています。
犬種はケアンテリア・柴犬・シェパード・スピッツなど多岐に渡り、多くの種類の犬に囲まれていました。
また犬たちにブランデーやウイスキー、シェリーといった、ユニークな名前を付けて可愛がっていたようです。
多くの犬のなかでも、とくにお気の犬種がケアンテリアでした。
吉田が飼っていたのは、つがい(雄と雌の一組)のケアンテリアで、サンフランシスコ講和条約を締結しアメリカから帰国する際にその二匹を購入しています。
吉田が渡米したのは、もちろん条約を結ぶためです。
しかし公務で渡ったアメリカで犬を入手してしまうとは、ケアンテリアがよほど魅力的に見えたのでしょう。
のちに吉田は神奈川県大磯にある邸宅に移り住み、晩年を迎えています。
邸宅のすぐ近くには海岸があり、そこが愛犬たちとの散歩コースでした。
散歩をサボったり人任せにはせず、毎日のように海岸に出向いたといいます。
愛犬たちとの時間を最後の日まで楽しんでいたのですね。
ドラマで見た犬も欲しがる
吉田の飼っていた犬のなかに、シェパードという犬種の犬がいます。
この子を愛犬として迎え入れるまでには、少々の苦労があったようです。
もともと吉田がシェパードを欲しがったのは、テレビの影響からでした。
当時の人気ドラマ『少年ジェット』に「シェーン号」というシェパード犬が出演しており、大人ながらもその姿に魅了されたのです。
元々はシェーン号を欲していたようですが、シェーン号にはもちろん飼い主がいるので、譲ってもらうことはできませんでした。
それでは次にと、シェーン号の子供を引き取ろうとしましたが、こちらもすでに別の飼い主がおり交渉は不成立。
吉田はがっくりと肩を落としていたそうですが、そこに朗報が入ります。
女優・若尾文子さんの愛犬・ベニーが、シェーン号の子犬を身ごもっているというのです。
吉田はすぐ若尾文子さんに連絡を取り、子犬を譲ってほしいと交渉しました。
そしてベニーが無事出産し、晴れて子犬をゲットしたそうです。
シェーン号や、その子犬を手に入れるため、吉田はいろんな人と交渉を重ねていたのですね。
犬への深い情熱と、愛が感じ取れます。
旧邸宅に今も残る犬たちの墓
大磯にある旧吉田茂邸の庭では、吉田の愛犬の墓石を見ることが現在も可能です。
お墓は四つあり、墓石には「愛犬」の文字と共に、それぞれ「サン」「ポチ」「バンゾウ」と犬たちの名前が刻印されています。
ポチのお墓が二つあるので、ポチと名付けた愛犬が二匹いたのかもしれませんね。
またサンの墓石には「サンチヤン」と彫られており、吉田がサンちゃんと呼んで愛犬を可愛がっていた様子がうかがえます。
サンは、前述のアメリカから連れ帰ったケアンテリアのうちの一匹です。
現在ではペット霊園なども増え、犬をはじめとしてペットを手厚く弔う人も多いです。
しかし当時の日本で、犬にお墓まで造るというのは珍しいことでした。
それほど吉田は愛犬たちのことを可愛がっていたのでしょう。
愛犬が亡くなってしまってからも彼らを自分の近くに置き、変わらない愛情をもって弔っていたのだと思います。
ときに10匹以上の犬を飼い、苦労しながら犬を譲り受けるといったエピソードからは、吉田茂の犬への愛が伝わってきますね。
ドラマで見たシェパードを欲しがったり、公務の帰りに犬を買ってきてしまうなど、ワンワン宰相・吉田は犬が絡むと子供っぽい一面を見せていたようです。