卑弥呼と天照大神は同一人物だった?日食の存在が接点に

「天の岩戸」伝説

『古事記』で太陽の化身として描かれている女神、「天照大神」。
この神様は、実在した女性をモデルにしているのではないかと考えられています。
その候補にあがっている一人が、邪馬台国の女王「卑弥呼」です。

天照大神のモデルは誰?

天照大神は神様なので、歴史上に実在する人物ではありません。
戦前の日本では、天皇は天照大神の子孫である、つまり天皇は「現人神(あらひとがみ:人の姿で現れた神)」であると学校で教えられていました。
現在では、そのようなお話は日本の神話の1つとして扱われるにすぎず、科学的な史実としてみなされていません。

しかし天照大神のモデルと考えられる人物については何人かの候補がいて、すべて歴史上に実在しています。
たとえば聖徳太子を摂政とした「推古天皇」や、天武天皇のあとを継いで日本の律令を整えた「持統天皇」など、女性の天皇が候補としてあげられています。
邪馬台国の女王だった卑弥呼も、こうした候補の一人なんです。

天照大神と太陽

なぜ卑弥呼が天照大神のモデルになったのかを考える前に、天照大神とはどのような神様なのかをみてみましょう。
漢字を見てもわかるように、「アマテラス」は「天を照らす」といった意味です。
『古事記』では太陽の化身として描かれています。

天照大神にまつわる神話はたくさんあります。
最も有名なものが、「天の岩戸(あまのいわと)伝説」です。
天照大神にはスサノオノミコトという弟がいて、これがとんでもない乱暴者。
天上界でさんざん悪さをしたあげく、ついには姉の天照大神が機織り(はたおり)をする部屋に生きた馬の皮を剥いで投げ込むという、とんでもない暴挙をおかします。
驚いた天照大神は、ショックで洞窟に引きこもってしまいました。
入り口を大きな岩でふさいでしまい、中から出てこようとしません。
すると世の中は真っ暗な闇に包まれて、さまざまな災いが起こるようになりました。

天照大神は太陽の化身。
その彼女が姿を隠してしまったので、太陽も空から姿を消してしまったというわけです。

卑弥呼と日食

今度は女王、卑弥呼についてみてみましょう。
占いやまじないで国を治めていた卑弥呼には、神と通じる不思議な力があると考えられていました。
そんな神様に近い存在である卑弥呼の死は、当時の人々にとって大変な事件だったと思われます。
これからは誰が神のことばを聞くのか、邪馬台国はどうなるのか。
大きな不安が世の中を襲うなか、人々をさらに震え上がらせる自然現象が発生します。

実は天文学上の計算によれば、卑弥呼が死ぬ前の年の247年と、死んだとされる248年には日食が起きていたという説があるのです。
もし日食が起きていたとすると、「女王が死んだので世界が真っ暗になってしまった」と大騒ぎだったのかもしれません。

このときの様子を描いたのが天の岩戸伝説ではないか。
「卑弥呼が死んだら日食が起きた」という歴史的な出来事を、古事記では「天照大神が岩戸に姿を隠したので世の中が闇に包まれた」と脚色したのではないかというわけです。

あくまでも天の岩戸伝説は神話にすぎません。
しかし神話には歴史の真実が隠れていることもあるのも確かです。
現在、歴史学だけではなく、言語学、天文学、考古学などのいろいろな分野において分析が行われています。
日食があったという説が確かなものとなれば、天照大神は卑弥呼と同一人物であるといえるようになるかもしれません。

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歴史スター名鑑 編集部

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