紫式部は猫好き?源氏物語にも猫を登場させていた!
紫式部は猫が好き?
紫式部は猫好きだったと推察されています。
彼女の書いた『源氏物語』の重要部分に、猫が登場しているためです。
また平安時代の貴族たちには、猫をペットとして愛でる習慣がありました。
そのため紫式部についても、ほかの貴族たちと同じく猫を愛したと考えられています。
源氏物語での猫
源氏物語は54編で構成されていますが、大きくふたつに分けることもできます。
光源氏を主人公としたパートと、彼の息子である薫を主人公としたパートです。
厳密には、薫は光源氏の本当の子供ではありません。
光源氏の妻である女三宮(おんなさんのみや)が不倫をした末に生まれたのが薫なのです。
第2部の主役である薫の誕生シーンは、源氏物語で重要な部分となっています。
紫式部は、女三宮が不倫に陥るきっかけとして、猫を登場させました。
とはいえ以下のシーンは、猫以外の動物を代用しても問題ないように思えます。
わざわざ猫を登場させたのは、紫式部の趣味嗜好が影響しているといえそうです。
具体的にみてみましょう。
猫の登場シーン
女三宮に恋心を抱いていた人物が、柏木(かしわぎ)という貴族の青年です。
しかし身分が低かったため結婚は許されず、女三宮は光源氏のもとへ嫁いでいきます。
諦めきれない柏木はある日、貴族たちと蹴鞠(けまり)をしながら、女三宮の居る部屋の様子をうかがっていました。
とはいえ平安時代の女性貴族たちは、顔や姿を隠して生活するのが普通です。
部屋の前には御簾(みす)がかけてあり、その姿を見られませんでした。
この場面で登場するのが、女三宮の飼っていた子猫です。
子猫は御簾の近くに紐(ひも)でつながれていましたが、別の猫に追いかけられると、逃げようとして動きまわりました。
そのうち、子猫は御簾に紐を引っかけて、御簾を大きくずらしてしまうことに。
御簾のそばにいた女三宮は、そこで柏木らに顔をみせてしまったのです。
恋い焦がれていた女性の素顔を見た柏木は、さらに恋心を募らせました。
彼は「叶わぬ恋ならばせめて、女三宮の元にいた子猫が欲しい」と考え、御簾をずらした子猫を引き取ります。
しばらくのあいだ、柏木は彼女の代わりである子猫を溺愛しました。
しかし結局は女三宮への思いを断ち切れず、柏木は彼女の部屋に押しかけます。
少し強引に不倫関係が結ばれると、やがて三宮は薫を身ごもることになりました。
…このように、猫が柏木と女三宮の不倫のきっかけを作っているわけです。
平安時代の猫
紫式部が猫好きだったという考えは、平安時代当時の習慣も背景にあります。
当時の貴族たちは、可愛がることを目的に猫をそばに置いていたのです。
猫とよく比較される動物といえば犬でしょう。
しかし平安時代の犬は、野犬であるか、狩猟犬として飼われている場合が大半でした。
それに対して猫は、いまと同じく愛玩用だったようです。
貴族たちもペットとして猫を飼い、可愛がっていたといわれています。
そして紫式部自身も、貴族の家系出身でした。
猫を飼っていたり、大切にしていた可能性は十分に考えられます。
源氏物語での猫は、主人公の妻の不倫や、子供の誕生という重要な展開に関わっていました。
それだけ紫式部は猫が好きだったんでしょう。
ほかの平安貴族たちも含め、猫が人気なのは今も同じですね。