めちゃくちゃ不仲!吉田茂と河野一郎の険悪エピソード3つ

河野一郎

外務大臣や総理大臣を務めた吉田茂には、犬猿の仲といわれる人物がいました。
同じ政治家である、河野一郎です。
河野は農林大臣や行政管理庁長官を歴任し、総理大臣候補として名前が挙がるほどの大物でした。

吉田と河野は同じ政党に所属していましたが、折り合いが悪く、非常に険悪な間柄だったようです。
彼らの不仲さを象徴するエピソードと、ふたりが嫌いあった理由を紹介していきます。

嫌いな政治家として名指し

吉田茂は新聞記者にインタビューを受けた際、嫌いな政治家を問われたことがあります。
そのとき彼は「李承晩(りしょうばん)と河野一郎」と答えました。

李承晩は韓国の初代大統領です。
竹島や領海の不法占拠、親日韓国人の断罪、沖縄と対馬を自国の領土と主張するなど、徹底した反日政策を行いました。
吉田は「李承晩のせいで、日韓はこの先100年まともな外交ができないだろう」とぼやいたといいます。

そしてこの李承晩と並べる形で、吉田は河野一郎の名前を口にしたのです。
吉田が河野に対して、どれほどの悪感情を抱いていたのかが垣間みえますね。

河野邸への放火を笑い飛ばす

1963年の7月15日、河野一郎の自宅が放火される事件が起こりました。
河野は仕事で外出しており家族も全員無事でしたが、新築したばかりだった自宅は全焼しています。

この事件の一報を聞いた吉田茂るは非常に機嫌がよくなり、うれしそうに笑っていたそうです。
放火のあった当日、政治家の三木武夫が吉田邸を訪ねた際も吉田は上機嫌なままでした。

三木がなぜ機嫌がよいのか聞いてみると、吉田は「今日は愉快だ。河野の家が燃えているんだよ」「河野邸の焼き討ちだ」と楽しそうに答えたそうです。
また「悪いことをして金を貯めたバチが当たった」とも毒づいています。

後日には、皮肉たっぷりに「私のように親の財産を使ったのなら、頼んでも放火はされない」と語りました。
吉田は親を亡くしてから遺産を豪勢に使っていたようですが、それよりも他人様のお金を使っている河野のほうが迷惑だと非難したのでしょう。

選挙中に除名する暴挙

吉田茂と河野一郎は不仲でありながらも、両者とも同じ『日本自由党』に所属しています。
自由党の総裁は吉田でしたが、党内は吉田派と反吉田派に分かれていました。
その反吉田派の筆頭にいたのが河野です。

第三次吉田内閣が解散となり総選挙が行われる直前、吉田は「党に対する反抗的言動」を理由に河野を自由党から除名しています。
自由党トップである吉田が、必要におうじて党員を除名するのはおかしなことではありません。
しかし選挙期間中の除名処分は、いささか横暴ともいえるでしょう。

選挙期間に除名されたのは、河野と同じく反吉田派だった石橋湛山(いしばしたんざん)のみでした。
ふたりを排除することで反吉田派を牽制したわけですが、吉田に反発していた党員はほかにもおり、必ずしも河野らを除名する必要はなかったかもしれません。
この人選には、吉田の個人的な感情も影響していたと考えられます。

不仲の理由ときっかけ

吉田茂と河野一郎の不仲の根本にあるのは、出身による派閥の違いです。
吉田は官僚、いわゆるキャリア公務員の出身であり、河野は党人派とよばれる非官僚出身の政治家でした。
ふたりに限らず、昔から官僚と党人派の政治家は仲が悪く対立構図があるそうです。

そんななか吉田が初めて総理大臣に就任したころ、吉田と河野の不仲は決定的になります。

当時の日本自由党のトップは「鳩山一郎」であり、河野ら党員は鳩山を総理大臣にしようと働きかけていました。
しかし当時日本を占拠していたGHQの命令により、鳩山は総理就任直前で公職追放(=政治活動禁止)の処分を受けます。

そこで鳩山に代わって、自由党の総裁となったのが吉田茂です。
吉田は順調に総理大臣の座につきましたが、党人派の自由党幹部をあまり信用しておらず、河野らに相談しないで内閣の人事を決めていきました。
これに河野が激怒し、それ以来ふたりは犬猿の仲になったのです。

また吉田は、自由党の総裁就任を引き受けた際「鳩山の公職追放が解けるまで」と約束していました。
ところが実際に鳩山が政界に復帰すると、自由党総裁の座を譲らず、吉田内閣も続行したのです。
このことが鳩山の盟友である河野との溝をさらに深める原因になったといわれています。

吉田茂が河野一郎を嫌いだと名指ししていたり、河野が反吉田派として反発を繰り返していることから、ふたりの不仲は相当なものだったのでしょう。
さらに吉田は河野の家が放火されても笑っていたというのですから、死んでもあの世で憎み続けているかもしれませんね。

この記事を書いた人

くろ

はじめまして、くろです。下手の横好きで歴史情報をちょろちょろ集めております。収集癖がみなさんのお役に立てば幸いです。